交通事故のQ&A
◆人身事故に遭ったら
Q1.交通事故に遭って、現在治療中です。健康保険を使って診療代を払おうとしたら、病院から「交通事故の場合、健康保険は使えません」と言われました。しかし、使えるはずだと言う人もいます。どちらが本当でしょうか。
●交通事故でも健康保険は使えます
病院の窓口では「交通事故の場合、健康保険は使えません」と言われる場合があります。一般的に、交通事故の場合は健康保険は使えない、と思っている人も多くいます。しかし、交通事故でも健康保険は使えるのです。健康保険の場合は治療費の単価は決まっていますが、健康保険を使わない自由診療の場合は、治療費が高くなるのが普通です。ですから、自由診療でも保険会社から支払ってもらえる交通事故の場合は、健康保険を使かわず自由診療をすすめる病院も多いのではないでしょうか。加害者が任意保険に加入しておらず、治療が長期になりそうな場合は、自由診療ではなく健康保険を使うことをお勧めします。
一方、必ずしも健康保険を使ったから� ��いって、常に有利になるというものではない場合があります。保険会社の担当者から、健康保険を使ってほしいといわれている場合でも、健康保険を使うことが本当に自分のためになるのか、良く確認してから結論を出すべきです。
Q2.通勤途中に交通事故に遭いました。労災保険も使えますか。
●通勤中の事故は労災保険も請求できます
通勤途中の交通事故は、労災保険の通勤災害になり、保険を請求できます。被害者が、労災の給付と自賠責保険の給付のどちらも請求できる場合は、労働基準監督署は原則として自賠責保険の支払いを先行させるとしていますが、強制ではありません。しかし、労災保険の給付と自賠責保険の給付と二重に受け取ることはできません。
自賠責保険を先に使うべきか、労災保険を先に使うべきか迷うところですが、一般的には自賠責保険を先に使用したほうが有利だと考えられます。
ただし、被害者の過失が大きい場合とか、加害者の賠償資力に問題がある場合など、労災保険を先行させたほうが良い場合もあります。
Q3.人身事故にあい、自分の生活がメチャクチャになりました。加害者は一度謝りに来たきりでまったく誠意が感じられません。賠償金は任意保険から全部支払うと言っていますが、それだけでは私の腹の虫が収まりません。保険金とは別に、加害者から自腹での慰謝料を取ることはできますか。
●自腹での慰謝料を、強制的にとる方法はありません
ご気分は十分に分かります。しかし、任意保険で十分な保険がかけてあれば、法律上支払わなければならない損害賠償額については、保険会社が支払うことになり、加害者が自腹で支払わなければならない義務は生じません。
加害者に対して特別な出費を求めたい気持ちはわかりますが、残念ながらこれを強制することはできません。
Q4.人身事故にあい、その損害賠償の請求を任意保険会社にしていますが交渉が長引いています。解決するまで支払ってもらえないのでしょうか。
●保険支払が長引く場合は、自賠責保険を請求する方法があります 加害者が任意保険に加入している場合は、任意保険会社のみを窓口として交渉し、自賠責分と合わせて損害賠償をしてもらうほうが手続きが面倒でないというメリットがあります。しかし、ご質問のように交渉が長引きそうな場合は、自賠責保険を先に請求して保険金を貰ってから、あとでじっくり任意保険の分を交渉したほうが良いと思います。
また、被害者の過失割合が多い場合も、自賠責保険を先に請求して保険金を貰っていたほうが有利な場合があります。自賠責保険は被害者の救済が目的ですから、被害者の過失割合が7割未満の場合は、保険金の支払いが減額されることがありませんが、任意保険や裁判では過失相殺が厳格に適用されますので、自賠責保険の額より少ない賠償額になることがあるからです。
Q5.鞭打ち症の治療は3ヶ月しか認められないといわれましたが、本当なのでしょうか。
●鞭打ち症の治療期間はケースにより違います
鞭打ち症の痛みの原因や症状は人によって実に様々です。一番多いと言われている頚椎捻挫型の鞭打ち症の場合は、医学的には多くは1〜3ヶ月で治るといわれています。
それを受けて最高裁(昭和63年4月21日判決)は『〜衝撃の程度が軽微で損傷が頚部軟部組織にとどまっている場合には、入院安静を要するとしても長時間にわたる必要はなく、その後は多少の自覚症状があっても日常生活に復帰させた上適切な治療を施せば、ほとんど1ヶ月以内、長くとも2,3ヶ月以内に通常の生活に戻ることができるのが一般である。〜』との見解を示しました。損保会社では、その判例を根拠に「.鞭打ち症の治療は3ヶ月しか認められない」と言ってくるケースがあります。
しかし、鞭打ち症の痛みの原因や症状は人によって実に様々で、単純に3ヶ月で治療が必要で無くなるという単純な問題ではありません。どれくらいの治療が必要なのかということは損保会社が勝手に判断できるものではありません。被害者の症状なり、回復の状況をみながら医師と相談の上考えるべきことです。
Q6顔に大きな傷跡が残りました。後遺症として認定されましたが、保険会社に「逸失利益はない」と言われましたが本当でしょうか。
●外貌醜状で逸失利益が認められる場合もあります
体に残った傷跡のことを外貌醜状(がいぼうしゅうじょう)といい、顔の傷跡は顔面醜状(がんめんしゅうじょう)といいます。一般的には、外貌醜状が残っても、それ自体で労働能力に影響があるわけではありませんので「逸失利益はない」と言うことになります。
しかし、「外貌醜状の存在によって身体的機能そのものには支障ないとしても、職業選択が制限されたり、営業成績が上がらない、仕事の能率や意欲を低下させ、ひいては所得に影響を与えることは十分考えられる」として逸失利益を認めた判例もありますので、その人の性別、職業や年齢などを個別に検討する必要があります。
Q7. 後遺症の等級認定の結果「不認定」になりました。納得いかないので異議申立てをしたいのですが、どうすればいいのですか。
GMの従業員の開始を確定したとき●後遺症の等級「不認定」の異議申し立ては根拠を明確に
後遺症の等級認定に対する異議申し立ては、保険会社から用紙を入手して行うことになります。
しかし、後遺障害は「認定基準」によって決められますから、何の根拠も示さずに異議申立てをしても結果は変わりません。
なぜ不認定になったのかを調べ、どうすれば認定される可能性があるのかについて検討しましょう。その人ごとに異なりますので、ご相談ください。
Q8.交通事故で怪我をしました。治療で認められるのはどんな費用ですか。
●治療に必要な費用の他に交通費も対象になります
過剰診療と判断される場合は別ですが、治療費や入院費の実費が対象になります。治療のため付き添い必要だと医師が認めた場合は付添看護費が認められ、入院の場合に必要な日用品の購入や栄養補給品、新聞雑誌、通信費などの入院雑費も認められます。交通費も実費が認められます。義足・車椅子・補聴器・入歯・義眼・カツラ・眼鏡・コンタクトレンズなどの装具も対象となります。鍼灸・マッサージ費用・柔道整復なども医師が指示してうけた場合は認められます。温泉療養費も医師が療養上必要と認めた場合は認められていますが、その場合は額が制限されています。
Q9.子供が交通事故に遭って入院しました。学習の遅れを取り戻すために家庭教師を頼みましたが、この費用は認められるのですか。
交通事故による学習の遅れを取り戻すために補修授業を受けたり家庭教師に支払った謝礼、無駄となった教育費用なども、被害の程度、内容、年齢、家族状況に照らして必要性があれば学習費として認められます。
また、被害者の子供の看護のため他の子供を保育所に預けなければならなくなったための保育料や、子供を他の第三者に預けた場合の監護費用なども、必要かつ相当な範囲での実費または保育費相当額が保育費として認められます。
Q10.息子が飲酒運転で自損事故を起し、大怪我をしました。やはり保険金はおりないのでしょうか。
自損事故の場合は、自賠責保険はおりません。
また、任意保険の自損事故保険は、無免許や酒酔い運転、麻薬・大麻・アヘン・覚醒剤・シンナー等の影響が認められる運転の場合は保険金が支払われません。
Q11.交通事故の治療のため、整形外科に通院していますが、病院が遠く、いつも混んでいるので近くの整骨院にかかりたいのですが可能でしょうか。
交通事故により、頸椎捻挫(けいついねんざ)や腰椎捻挫(ようついねんざ)等の障害を負った被害者が、柔道整復、あんまマッサージ指圧、はり、灸などの東洋医学にもとづく施術を受ける場合は、事前に任意保険会社の担当者に断っておいたほうが良いと思います。医師の指示があって整骨院等に通う場合は大きな問題は起こらないと思いますが、自分の判断だけで長期間の施術をうけて高額な治療費を請求しても、治療費の全額が保険で支払われないようなケースもあります。
一般に整骨院として開業している柔道整復師や、あんまマッサージ指圧、はり、灸などは法律に基づいた免許を有するものが施術を行いますので保険の認定の対象となりますが、それ以外の医療類似行為(カイロプラクティックなど)は、無資格者の施術という扱いになりますので自賠責保険の認定の対象とはなっていません。
Q12.妻と車で買い物に出かける途中に自損事故をおこし、助手席に乗っていた妻が怪我をしました。自動車保険は支払われますか。
自賠責保険は『他人』に対して支払われるものですが、妻や子供のような近親者が被害者の場合は「親族間事故」といって、通常の場合と若干取扱が異なることがありますが、自賠責保険金は通常支払われます。
任意保険の自損事故保険は、自賠責保険が支払われない場合にのみ支払われる保険ですので、この場合は支払われません。
◆逸失利益・慰謝料
Q13.鞭打ちで3ヶ月間に30日通院して治癒しました。妥当な慰謝料の金額を教えてください。
入通院の場合の自賠責保険の計算方法は、総治療期間の範囲内で実治療日数(入院を含める)の2倍に相当する金額となります。
ご質問の場合、自賠責保険の計算方法(特別な事情がなければ)では4,200円×2×30日=252,000円となります。
また、民事交通事故裁判の判断基準として利用されている通称「赤い本」の慰謝料表では53万円ということになります。
今度の事故の妥当な慰謝料の金額は、25万円から53万円の範囲内が妥当な金額と考えられます。
Q14.夫が交通事故にあい、脳に障害を受け植物人間になってしまいました。どのような損害賠償を請求すればいいのでしょうか。
意識不明のまま寝たきり状態になった場合は、障害等級が3級以上に認定されますから、労働能力喪失率は100%になり、稼動可能年数(一般的には67歳まで)の逸失利益が認められます。
また、ご主人の入院中の慰謝料と後遺障害の慰謝料は当然として認められますが、その他に一生涯にわたる介護に従事することになる奥様の慰謝料をも認める判例も多く見られます。
いわゆる植物人間と言われる状態の被害者の介護は、一生涯にわたる長期に及ぶことから終生介護料(付添看護費)を受けられます。
Q15.私の妻は、専業主婦で仕事をしていません。無職の妻にも逸失利益は認められるのでしょうか。
あなたは本当にお金がザンゴを売って作るのですか?最高裁は「家事労働は金銭的に評価が可能である」として専業主婦の逸失利益を認めました。
したがって、負傷のため家事労働ができなかった期間について休業損害を請求することができます。
休業損害の請求の基礎となる収入額は、基本的には原則として女子労働者の平均賃金ですが、統計資料としては賃金センサスの全年齢平均給与額を用いる例が多いようですが、判例では、ケースによっては学歴であったり、年齢層であったり個別事例で判断が違ってくるようです。
もちろん、後遺障害があればその逸失利益、慰謝料も別に請求できることは言うまでもありません。
Q16.私の長男は、まだ小学生でいたが、下校途中に交通事故で死亡しました。収入のない小学生でも逸失利益は認められるのでしょうか。
最高裁は「事故による死亡につき、得べかりし利益を、できる限りの客観性のある額を算定すべき」として幼児の逸失利益を認めました。
したがって、小学生のご子息の逸失利益は当然請求することができます。
具体的な請求の基礎となる収入額は、基本的には原則として男子労働者の平均賃金ですが、統計資料としては賃金センサスの全年齢平均給与額を用いる例が多いようです。一般的には、その給与額に「就労可能年数とライブニッツ係数表」の18才未満の者に適用する表で係数を調べ、その係数をかけることで計算しますが、本人の生活費率(独身男性の場合は50%)も控除されます。
(計算式)
逸失利益=((賃金センサスの平均給与額×(1−生活費割合))×就労可能年数に対応する係数(ライブニッツ係数)
Q17.私の夫はサラリーマンでしたが、交通事故で死亡しました。夫は毎年昇給し、年2回のボーナスもあり退職金制度もありました。サラリーマンの逸失利益の計算ではこれらの将来の収入、そして、定年後の収入は認められるのでしょうか。
逸失利益の算定は、事故当時の被害者の収入を基礎にするのが原則ですが、サラリーマンの逸失利益の計算では、会社に昇給規定などがありそれによって昇給することが予想されるのであれば、これらの将来の収入も、逸失利益として認められます。もちろん賞与も逸失利益として認められます。
また、60歳で定年になったとしても、原則として67歳までの定年後の収入も認められています。具体的な計算式は前に説明したとおりです。ただ、生活費割合は、女性の場合は30〜40%位となります。
Q18. 私の夫はサラリーマンでしたが、定年後に再就職先を探している時に、交通事故に遭い死亡しました。失業中でも逸失利益は認められるのでしょうか。
逸失利益の算定は、事故当時の被害者の収入を基礎にするのが原則ですので、失業中で収入がない場合は、原則として逸失利益の請求は拒否されます。
しかし、就労する意思が強固で能力もあり、就職が内定しているとか、治療期間中に就労する蓋然性(がいぜんせい=実際に起こる可能性)が高い場合は認められます。
再就職の可能性が高いと認められれば、60歳で定年になったとしても、原則として67歳まで、高齢者の場合は平均余命年数の2分の1が就労可能年数となります。定年後の収入も認められています。具体的な計算式は前に説明したとおりです。具体的な請求の基礎となる収入額は、基本的には原則として男子労働者の平均賃金ですが、統計資料としては賃金センサスの年齢別平均給与額を用いる例が多いようです。
Q19.私の家は専業農家で、水田と野菜の栽培を主に作付けして生計を立てています。普段は妻と二人で、農繁期は家族4人で仕事をしています。私は畑に行こうとして道路を横切ったときに交通事故に遭い、入院と通院で10ヶ月かかり、後遺障害が残りました。私のような農業を営む者の逸失利益はどのように計算するのでしょうか。
農業経営の場合は、青色申告で正確な記帳をしている場合など所得計算が可能な場合は、その確定申告書をもとに比較的計算が可能ですが、それでも気候に大きく左右され、収穫量が年によって違ったり、販売単価が年によりあるいは出荷時期で大きく変わるなど、所得が大きく変動することも珍しくありません。
また、農業収入が家族4人の労働によって得られていますので、ご質問者の奥様や他のご家族の皆さんの労働の寄与率を何%にするかで逸失利益の計算が違ってきます。
もし、正確な記帳がなされていない場合は、農林水産省統計部編「農業経営統計調査報告」による所得を計算の基礎にすることも考えられます。
当事務所は、行政書士の仕事のほかに中小企業診断士として「農業経営支援センター」の会員に登録しており、農業経営の資料も豊富です。是非、ご相談ください。
Q20.私は中小企業の経営者です。妻が経理を見ており従業員はいません。私が現場に行く途中に交通事故に遭い、3ヶ月入院しました。その間、営業活動ができませんでしたので会社の売上が激減しました。会社の損失を加害者に請求することができますか。
ご質問のような、直接の被害者の損害ではなく、被害者が休業したために収益が減少したような間接的な損害が生じた場合は、判例も学説も「相当の因果関係があれば認めるもの」「間接的な被害者である会社の損害賠償権を認めないもの」などに別れて、ケースによって判断が分かれるようです。
しかし、ご質問のような事例は「会社と受傷者が経済的に同一体性の関係があって、代表取締役が会社の機関として代替性がない場合には、会社の収益減少による損害は、同人の受傷と相当因果関係にたつ損害である」とする最高裁の判断に照らして損害賠償請求ができるケースだと思われます。
この、同一体性の関係と代替性がないという事実関係は厳しく判断されている判例が多いようです。また、会社の経営者ではなく、従業員であっても同様の判断がなされますが、経営者と違い従業員の場合は、例外として認めるという姿勢が強いようです。
Q21.夫は交通事故によって70歳で亡くなりました。生前は老齢厚生年金を受給していましたが、年金の逸失利益は認められるのでしょうか。
物流マネージャーは何をするのでしょうか?年金の逸失利益も当然に認められるのでしょう。期間は平均余命ということになります。
但し、妻が夫の死亡により遺族厚生年金を受給している場合は、損益相殺の対象となり損害賠償金の合計額から控除されます。
Q22交通.事故で怪我をし、仕事が継続できなくなり解雇されました。交通事故が原因なので、再就職ができるまで休業損害を請求できますか。
交通事故による休業損害は、通常、治癒または症状固定までの間に現実に休業した期間が計算の対象となります。しかし、就労が可能な状態まで身体が回復している場合は、休業期間が制限される場合もあります。
ご質問のような、交通事故による怪我が原因で会社を解雇された場合でも、原則的には休業損害は就労が困難な期間しか認められません。
但し、個別の事情により身体が回復しても再就職まで、あるいは再就職に必要な相当期間が認められる場合もあります。
Q23関連質問です。交通.事故で怪我をし、解雇されました。雇用保険の失業給付はもらえるのでしょうか。また、休業損害請求との関係はどうなりますか。
交通事故による労働能力喪失が原因で解雇されたとしても「労働能力を完全に喪失」し、労働する意思があっても労働能力がない場合は失業給付は受けられません。
しかし、交通事故による怪我が原因で会社を解雇された場合でも、別な軽易な労働には従事することが可能な場合があります。このような状態の場合は、ハローワークで「現状の体で出来る仕事を探しています」といえば、失業認定されると思います。
また、失業給付期間中であって、失業給付を受けている場合でも、治療期間に対応する休業損害等事故による損害賠償請求には影響を与えません。つまり、実治療日数分に対応する休業損害請求は可能です。
◆物損事故・その他
Q24物損事故でお互いに過失がありました。任意保険会社の人がいう『クロス払い』とはどういう意味ですか
物損事故の示談で通常利用される方法が『クロス払い』です。「甲の損害額×乙の過失割合」を乙が支払い、「乙の損害額×甲の過失割合」を甲が支払うというものです。
具体例で説明します。甲さんの過失が7割で甲さんの車の修理代が80万円、乙さんの過失が3割で乙さんの車の修理代が50万円だった場合、それぞれの支払い額は次のようになります。
甲さんの支払い額=50万×7割=35万
乙さんの支払い額=80万×3割=24万
Q25.交通事故の過失として、相手方は私のスピードの出しすぎを指摘しています。私はそんなにスピードを出していないと主張していますが、証拠がありません。急ブレーキをかけたときのブレーキ痕が残っていますが、それから速度を計算することはできますか。
交通事故現場に残された路上痕跡のなかでタイヤの痕跡を総称して「スキッドマーク」といいます。「スキッドマーク」は、@スリップ痕A横滑り痕Bスキッド痕に分けられますが、スリップ痕から凡そのスピードを推測することは可能です。
スリップ痕から制動開始時の初速度を計算するには
√ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
制動初速度= 259×制動痕の長さ×摩擦係数
(km/h) (m)
という式を使います。
(例)
スリップ痕の長さが10m、摩擦係数は路面の状態で違いますが、ここでは0.7と仮定し、道路勾配はないものとして計算すると、制動初速度は42.5km/hということになります。
しかし、実際には路面がコンクリートであったりアスファルト、砂利道とさまざまで冬道、雨の日、気温、車体重量、道路の勾配などでも入れる数字が違ってきます。一般の人が公式に当てはめてスピードを推計するのは極めて困難です。交通事故をとりあつかっている行政書士などの専門家は「交通事故解析用ソフト」を使って複雑な計算をパソコンで正確に計算しますから、専門家にご相談することをお勧めします。
Q26夫が夜間に自家用車を運転中、カーブでハンドル操作を誤り道路側面の擁壁に激突し死亡しました。多額の借金があったため、自殺ではないかと損保会社の担当者に疑われています。どうしたらいいでしょうか。
交通事故の死亡事故を検証する警察の捜査の結果、自殺と断定された場合は、保険金(自賠責保険、自損事故保険、搭乗者傷害保険)はおりません。
原因が、自殺かどうか不明の場合は、保険会社との話し合いがうまく進まない場合が多いと思います。そのような難しい事故の場合はご相談ください。
Q27.信号のない交差点で事故を起しました。示談交渉で、相手の人(保険会社の担当者)に『こちら側は明らかに広い道路だから、あなたの過失割合は70%で、当方の過失は30%になります』といわれました。明らかに広いというのは、どれくらいの差がある場合をいうのでしょうか。
『明らかに広い道路』とは、狭い道路に対して何%広い道路をいう、などの基準はありません。
具体的な基準はありませんが、判断基準としては「自動車の運転者が交差点の入り口において、道路の幅が客観的にかなり広いと一見して見分けられるもの」をいいます。
もっと具体的な基準を知りたいとすれば、個々の判例を調べ、裁判官の判断基準を探り、事例ごとに検討するしかないでしょう。
Q28.交通事故から2年以上が経過しました。加害者から2年で時効だから支払いは出来ないと言われました。もう損害賠償請求はできないのでしょうか。
保険会社への保険金請求権の時効は2年(平成22年4月1日以降の事故は3年)です。しかし、民法が定める交通事故による損害賠償請求権の時効は3年です。損害賠償の請求は可能です。
但し、任意保険の請求権は2年(平成22年4月1日以降の事故は3年)で時効になりますので注意が必要です。時効の起算日は、対人・対物保険が判決確定日・和解・調停成立の日から、その他の保険は事故日から起算されます。また、自賠責保険の被害者請求権の消滅時効も2年(平成22年4月1日以降の事故は3年)です。被害者が事故日から2年(平成22年4月1日以降の事故は3年)間、仮払いや内払いの請求をしないと時効により請求権が亡くなります。
しかし、自賠責保険の加害者の請求権は「被害者に賠償金を支払った日から2年(平成22年4月1日以降の事故は3年)間」です。つまり、事故から2年(平成22年4月1日以降の事故は3年)以上経過していても、加害者と被害者が示談して、加害者が賠償金を支払えば、加害者が自賠責保険に請求できるということになります。
Q29交通事故の示談交渉で、損保会社の担当者を交えず話し合いをし、双方が納得して示談書をまとめました。その示談書により保険会社に保険請求をしたところ、保険会社からは自賠責基準以上は支払わないという返事でした。当事者が納得しているのに理解できません。
● 保険金の支払いは保険会社の承認する範囲内で・・・
確かに当事者を差し置いて保険会社の担当者が話し合う姿は釈然としないものがあります。事故の当事者が示談をまとめるのが正常な姿であることはその通りです。
しかし、契約者(事故の当事者)は保険会社が承認する範囲外の示談については、契約者自身がその責に任ずることとされています。
つまり、いくら高額の損害賠償を行おうとも勝手だが、保険会社が承認をしない額は示談をした人の責任で賠償しなさいということです。もちろん、この姿勢の裏には被害者と加害者が結託して高額の保険金を騙し取る詐欺のような事故を防ぐという意味合いもあります。
保険会社が中に入らず、素人の人がまとめた示談書は思い違いで作られる場合もありますから、その場合は錯誤による無効を主張する� ��とも可能です。
Q30.追突事故に遭いました。あとで後遺症が出る心配があるから示談するなと知人に言われました。その通りなのでしょうか。
●後遺症を心配して示談を引き延ばす必要はありません
後遺症がないと思って示談に応じたら、後になって予測していなかった後遺症が出てきた。そんな場合は、その分の損害賠償請求は示談成立後でも出来ますので、後遺症を心配するあまり示談を引き伸ばす必要はまったくあまりありません。
ちなみに、むち打ち症の多くはすぐに痛みが出てこなくても、2〜3日後には何らかの症状が出てくるそうです。
Q31.車線のない下り山道の見通しの悪いカーブでバイクを運転中、道路幅の半分くらいの車幅の軽トラックが現れ、トラックの腹部に衝突して転倒しました。過失割合を書いている本を見てもこのような事例が載っていません。過失割合について教えて下さい。
ご質問のような事例が多くあるわけではなく、断定できないのですが、交通事故判例速報にある例をご紹介します。
衝突地点が明らかに原付自転車の進行方向右側のときは、原付自転車の過失は100%となる。質し(ただし)、カーブ等で見通しの悪い道路で、自動車が十分減速していなければ原付自転車の過失は70%程度に修正する。
Q32.過失相殺のほかに損益相殺というものもあり、加害者に請求できる金額が少なくなると聞きました。損益相殺って何ですか。
●損益相殺は公平な賠償額にするための手段です
一つの交通事故を理由に様々な保障を受けることを全て認めると、人によって多額の保障をもらえる人と少ない人がいるなどの不公平が出てきます。この不公平を是正して公平な賠償金にするのが損益相殺です。
では具体的に相殺されるものと相殺されないものを例示します。
★相殺されるもの(引かれるもの)
・死亡後の生活費(逸失利益からの生活費控除)
・受領済の自賠責損害賠償額、政府保障事業による補填金
・各種社会保険給付金(労災保険、健康保険、国民年金、厚生年金の給付など)
・所得保障保険契約にもとづいた保険金
★相殺されないもの(減額されず支給されるもの)
・加害者が支払った香典、見舞金
・生命保険契約にもとづく生命保険金
・労災保険で支払われる特別給付金
・雇用保険の失業給付金
・搭乗者障害保険
Q33.示談交渉がなかなかまとまりません。訴訟以外に解決の方法がありますか。
●交通事故の相談先は慎重に選ぶこと
交通事故の多くは示談交渉で解決されています。しかし、示談交渉がまとまらない場合は、時効の問題もありますのでそのままにしておかないで、都道府県や市町村が主催する法律相談や交通事故紛争処理機関などに相談する方法があります。交通事故相談に応じる機関はたくさんありますが、慎重に選ばないと誤った情報を提供されたり、無料相談のはずが、いつのまにか高額な成功報酬を支払う契約にサインしていたというトラブルに遭わないとも限りません。
法律相談の窓口には「日弁連交通事故相談センター」や「地方公共団体交通事故相談所」「自動車保険請求相談センター」「(財)交通事故紛争処理センター」などがあります。
Q34こちらの事務所に相談すると相談料を支払わないといけないのですね。
●当事務所の相談は有料ですが・・・
当事務所での相談は有料になります。基本的には保険金の請求を代理する前提でのご相談に応じています。有償での相談に移る場合はその旨をお客様に申し上げてからご相談に応じますから、無料だと思っていたのに相談料を請求されたということはありません。事実関係を確認するため電話でのご相談は基本的に応じておりません。日程を調整して直接お会いしてのご相談になります。
お客様が仕事を依頼するつもりでご相談においでいただいても、当事務所では、もっと安い費用で問題を解決できないのか、本当にお仕事を引き受けたほうがお客様のためになるのかを考えます。安心してご相談下さい。
Q35.関連質問です。大変言いにくいのですが、こちらの事務所は多方面の仕事をしているようですが、損害保険会社に対抗できる交通事故についての専門知識はあるのですか。
●当事務所の能力不足は全国の専門家がカバー・・・
ご心配は当然です。損保会社は専門のスッタフを多数かかえ顧問弁護士も沢山後ろについているのに、小さい個人事務所が本当に渡り合えるのかという疑問は当然です。こうした疑問に応えるため、長年にわたり交通事故を専門に取り扱ってきた先生を中心に全国の専門家が毎日情報を交換して、お客様の不利にならないように細心の注意を払っています。
いくら能力に優れた専門家でもミスはあるものです。私たちはその欠点をカバーするために協力しあって日夜努力しています。
0 コメント:
コメントを投稿